ホームページへ

変わりつつある経営者保証の実情を聞いてきました!【条件・デメリット】

財務・会計

先日、金融機関との情報交換会で話題となった「経営者保証に関するガイドライン」と「経営者保証改革プログラム」について、分かりやすく解説していきたいと思います。

本記事の内容

  • 経営者保証って何?自分に関係あるの?
  • 「経営者保証に関するガイドライン」と「経営者保証改革プログラム」の解説
  • 経営者保証を外す条件とデメリット
  • 実際にどのように動けばいいのか?

変わりつつある経営者保証の実情

経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること(保証債務を負うこと)。企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は、経営者個人が企業に代わって返済することを求められる(保証債務の履行を求められる)。

つまりは金融機関等からお金を借りるときに、金融機関側としては返済できるかどうか不安があるから人的担保として、経営者に保証させるということです。

あなたは、他人から「100万円貸してください!必ず返しますから!」と言われて、ポンっと貸せますか?よほどのお金持ちでなければ、貸す人はいないと思います。なぜなら、その人に信用がないからです。

信用がなければ、返ってこなかったときに他の何かで損失を補填したいと思いますよね?

その補填の方法が物であれば物的担保(土地に抵当権を設定するなど)、人であれば人的担保(経営者保証など)ということになります。

新しく会社を設立した時などでは、会社に資産がないので借入時に人的担保として経営者保証をされていました。

経営者保証が悪いわけではありません。先ほどの流れのように金融機関側が何かしらの担保を求めることは自然な考え方ですし、経営者保証をすることで借入を円滑に行い事業を開始できるので、経営者にとってもメリットはあります。

ただ最近では、経営者保証のデメリットが指摘されてきています。それは、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継を妨げる要因となっていることです。

経営者保証のデメリット

デメリット①:経営者による思い切った事業展開と早期の事業再生を妨げる

思い切った事業展開には、事業投資として資金が必要になります。計画的に資金を貯めていた場合は問題ありませんが、通常は金融機関から融資を受けることが多いです。しかし、経営者保証があると新たな返済義務を負いたくないため、事業展開自体を中止する、もしくは縮小するといったことになりかねません。

事業再生も同様に、売上増加のために新市場展開するなど、今までと違う方法を実行しようとしても資金の問題が発生します。特に事業再生をしようとしているのですから業績もあまり良くない状況も感じ取れますね。

デメリット②:円滑な事業承継を妨げる

事業承継をする際に、先代経営者の経営者保証も後継者に引き継がせる場合もあります。しかし、後継者としては、出来る限りリスクが少ない方がいいですよね?

後継者は今後、経営者として事業を引き継ぐだけでも不安を感じているのに重ねて、借入金の返済義務まで掛かるとしたら負担を大きく感じてしまい、後継者を辞退することも考えられます。

現在の経営者保証の実情

平成26年2月から「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、このようなデメリットがある経営者保証を解消する動きが高まってきています。

「経営者保証に関するガイドライン」について

このガイドラインには、以下の3つの要件が将来にわたって充足すると見込まれるときは、経営者保証を求めない可能性や、代替的な融資手法を活用する可能性を検討するとしている。

・要件①:法人個人の一体性の解消

1.社会通念上適切な範囲を超える法人から経営者への貸付金による流出の防止

2.経営者が法人の事業活動に必要な本社・工場・営業車などを所有している場合、法人所有とすることなど

経営者への貸付金の防止と記載されているが「ない」と思った方がいいでしょう。どうしてもある場合には、貸付金の用途を明らかにしておきましょう。金融機関としては貸した資金が事業ではなく経営者個人の生活費等に使われることを嫌います!

・要件②:財務基盤の強化(いずれかに該当)

1.業績がよく十分な利益(キャッシュフロー)を確保しており、内部留保も十分な場合

2.業績は不安定だが、業況の下振れリスクを勘案しても、内部留保が潤沢で借入金全額の返済が可能と判断できる場合

3.内部留保は潤沢ではないももの、好業績が続いており、今後も借入を順調に返済し得るだけの利益(キャッシュフロー)を確保する可能性が高い場合

つまりは、内部留保(繰越利益剰余金など)が十分にあるか、なければ過去2、3年の業績(営業利益など)が黒字であり、返済を考慮しても資金繰りに問題がないことを言っている。

・要件③:財務状況の適時適切な情報開示

1.決算の報告のほか、試算表、資金繰り表等の定期的な開示等

決算の報告は当然ですが、月次試算表を定期的に提供する必要があります。提供頻度は短い方が望ましいですが、遅くても3ヶ月に1回は提供したいものです。

経営者保証ガイドライン | 中小企業向け融資に関する相談窓口 | 一般社団法人 全国銀行協会 (zenginkyo.or.jp)

「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績について

情報交換会で聞いた話によると、2022年度の活用状況は、新規融資に対する経営者保証に依存しない融資の割合は民間金融機関全体で約33.2%であり、前年度に比べ約3.1%上昇しています。

実績を見る限りでは、年々経営者保証なしの融資が多くなっていることがわかります。しかし、金融庁のアンケート調査では、7割超の金融機関側が「新規融資の際にガイドラインについて説明を行う方針である」と回答しているのに対し、事業者側が「金融機関からガイドラインの説明を受けた」と回答しているのは3割程度だったことから、課題がある状況です。

この問題は、金融機関が「説明をしていない」なのか、「説明を受けたにもかかわらず、理解が出来ていないため説明を受けたか分からない」なのか分かりませんが、融資を受けようとしているのであれば、知っておくべき内容ですので、説明がなければこちらから聞くぐらいの方が融資もスムーズになるのではないでしょうか?

経営者保証改革プログラムについて

経営者保証改革プログラムとは、経営者保証の課題(デメリット)を解消するために、経済産業省・金融庁・財務省が連携し、4つの分野での取り組みです。

取り組み①:スタートアップ・創業-経営者保証を徴求しない融資の促進-

スタートアップの創業から5年以内の者に対する経営者保証を徴求しない新しい信用保証制度の創設や、日本公庫等における創業融資について経営者保証を求めない要件の緩和など

取り組み②:民間金融機関による融資-保証徴求手続きの厳格化、意識改革-

経営者等に経営者保証について説明し、金融庁はその報告を求める。金融庁が金融機関・事業者に対し、ガイドラインの説明会を開催する。など

取り組み③:信用保証付融資-経営者保証の提供を選択できる環境の整備-

経営者の取り組み次第で達成可能な要件を充足すれば、保証料を上乗せすることにより、経営者保証の解除を選択できる信用保証制度の創設など

取り組み④:中小企業のガバナンス-ガバナンス体制の整備を通じた持続的企業価値向上の実現-

ガバナンス体制整備に関するチェックシートと実務指針の策定。コロナ借換保証の創設。など

「経営者保証改革プログラム」の策定について:金融庁 (fsa.go.jp)

経営者保証を外すためには、どうすればいい?

実際に経営者保証を外したいと思った際に、どうすればいいのか分からないと思います。

方法としては、①金融機関に正面から聞いてみる、②専門家に相談するの2つがあります。

金融機関に正面から聞いてみる

まずは、ご自身で決算書と直近の試算表を見て、現時点の状況がガイドラインにある3要件を満たしているか確認しましょう。

要件を満たしていそうであれば、金融機関に出向いて経営者保証が外せないか聞いてみましょう。要件を満たしていれば外してもらえます。もし、外せないと言われた場合はどこがダメで外せないのか理由を尋ねてみましょう。

要件を満たしていなさそうな場合でも、今後の事業展開について説明が出来るように準備しておきましょう。例え、現時点が債務超過であっても、実現可能性の高い事業計画があれば外してもらえることもあります。

金融機関によって個別に経営者保証に対する基準を設けていますので、直接聞きに行く方が改善点が明確になります。

専門家に相談する

経営者保証を外すためには「この会社は経営者保証がなくても、返済できる」を信用してもらうことが重要です。

そのため、信用してもらうために税理士や中小企業診断士などの外部専門家に客観的に評価してもらい、その結果を金融機関に報告することも有効です。その際に、専門家と連携して経営改善計画を策定し、将来的に問題ないことをアピールできれば、経営者保証を外してもらえる可能性は高まります。

まとめ

今回は、経営者保証の実情を中心に、ガイドラインの内容や経営者保証を外すにはどうすればいいのか解説しました。今後、事業承継を考えられている方やこれから創業しようと思っている方には経営者保証について知っておいて損はないので、今回の記事を参考にしてもらえたらと思います。

事業承継を検討中の方は、こちらの記事も参考にしてもらえたらと思います。

【事業承継】失敗せずに事業を引き継がせるための3つの手法とは?? – まるたんブログ (marutan-blog.com)

これから創業しようと思っている方は、こちらです。

成功する起業家の5つの特徴と考え方は?事前に準備すべきことは何? – まるたんブログ (marutan-blog.com)

コメント